こんにちは!船井総研の山本千穂です。
普段は障害年金を取り組む社労士事務所様のサポートをしており、障害年金に特化した障害年金経営研究会という勉強会を開催しております。
今回は、障害年金経営研究会でも取り上げたことがある障害年金の申請時に初診日が証明できないときに使用する「第三者証明」についてお伝えしたいと思います。
第三者証明とは?
障害年金の申請の時に、初診日が証明できないときに提出する資料です。
正式には「初診日に関する第三者からの申立書」といいますが、略して「第三者証明」と呼んでいます。
この第三者証明の資料を出すことで「この病気での初診日はここですよ」というのが証明できます。
そもそも「初診日って何?」という方もいるかと思いますので、初診日についてお伝えをしたいと思います。
障害年金の初診日とは
そもそも初診日とは「はじめて病院に行った日」=「医師・歯科医師から診察を受けた日」になります。
簡単に言うと、
- 交通事故に遭って病院に搬送された日
- 脳出血で倒れて緊急入院した日
- 寝れなくて病院にいったらうつ病と診断された日
- 耳が聞こえなくて検査をしたら難聴と診断された日
など、病気やケガが発生して、診察を受けた日になります。
初診日は「歯科医師も含まれる」のがポイントです。
障害の原因となった病気やけがについて、はじめて医師または歯科医師の診療を受けた日をいいます。
同一の病気やけがで転医があった場合は、一番初めに医師または歯科医師の診療を受けた日が初診日となります。(厚生労働省より)
ここでポイントなのが「はじめて病院に行った日」になります。
例えば、今まで原因不明でいろいろな病院を転々としており、今通院してる病院で病名が分かった場合は、原因不明でも一番最初に病院に行った日が初診日になります。
- 不眠症で内科で診察を受けた。精神科を紹介してもらって受診したらうつ病と診断された→内科が初診
- 複数の病院をまわって、最近病名が判明した→最初の病院が初診
- 歯医者で口腔がんの疑いがあるといわれて、後日検査にいった→歯科が初診
になります。
※ケースバイケースですので例として分かりやすく記載しています。
この「はじめて」というのが少々ややこしいです。
初診日証明に関しては下記に記載しておりますのでこちらをご覧ください。→現在執筆中
初診日を証明できないときは
- 当時のカルテがなかった
- 病院が廃院していた
- 当時の主治医がいなくなっていた
などの理由から初診日証明ができない場合は、第三者証明の資料を使用します。
初診日を証明するのは第三者証明しか方法はないの?
結論、そんなことはありませんが、有効な証明方法として第三者証明があります。
初診日の確認は、初診時の医療機関の証明により行います。初診時の医療機関の証明が添付できない場合であっても、初診日を合理的に推定できるような一定の書類により、本人が申し立てた日を初診日と確認することができます。(厚生労働省より)
この「初診日を合理的に推定できるような一定の書類」の1つとして第三者証明があります。
「受診状況等証明書を添付できない申立書」を添付したり「 初診日が存在する期間を証明する参考資料」を準備する必要があります。
第三者証明以外で初診日を証明する方法
一定期間内に国民年金のみ加入の場合は①~③の資料
一定期間内に国民年金と厚生年金に加入していた場合は①~④が必要になります。
①受診状況等証明書を添付できない申立書
フォーマットはこちらです。(日本年金機構のサイトに飛びます)
② 一定期間の始期に関する参考資料
- 就職時に提出した診断書
- 人間ドックの結果(発病していないことが確認できる資料)
- 職場の人間関係が起因となった精神疾患であることを明らかにする医学的資料及び就職の時期を証明する
資料など
③ 一定期間の終期に関する参考資料
- 2番目以降に受診した医療機関による証明
- 交付日の記載された障害者手帳 など
④請求者が申し立てた初診日に関する参考資料
- 診察券
- 入院記録
- 医療機関や薬局の領収書
- 生命保険・損害保険・労災保険の給付申請時の診断書
- 障害者手帳の申請時の診断書
- 交通事故証明書
- インフォームド・コンセントによる医療情報サマリー
- 事業所等の健康診断の記録
- 健康保険の給付記録(レセプトを含む)
もしくは下記の⑤+⑥で申請することもあります。
⑤受診状況等証明書を添付できない申立書
⑥請求の5年以上前に医療機関が作成したカルテの写し等であって、請求者が申し立てた他の医療機関での初診日が記載されているもの
詳しくは日本年金機構が出している「障害年金の初診日証明書類のご案内」(初診時の医療機関の証明を得ることが難しい場合)をご覧ください。(クリックで飛びます)
第三者証明は誰に書いてもらえばいいの?
第三者証明の資料には下記のように記載されています。
- 提出後に内容確認をさせていただくことがありますのであらかじめご了承ください。
- 申立者は発病、事故、初診年月等の確認できる第三者(民選委員、病院長、施設長、事業主、隣人、友人等)となります。
- 民法上の三親等以内の親族は第三者となりません(過去の第三者証明のフォーマットより)
ということで、書いてもらう方は
- 民選委員
- 病院長
- 施設長
- 事業主
- 隣人
- 友人
などが対象となります。
ここで気を付けたいのは「三親等以内の親族は第三者とはならない」ということです。
三親等とか普段意識しないですよね。そもそも三親等って何?と思われる方もいるとおもいますので、民法の三親等の定義を見てみましょう。
さん‐しんとう【三親等】
親等の一。直系では、本人または配偶者から3世を隔てる尊属親または卑属親、すなわち曽(そう)祖父母または曽孫。傍系では、おじ・おば・甥(おい)・姪(めい)との関係。三等親。(デジタル大辞泉より)
少しややこしいですね…(あれ?私だけ?)
下記の図で「私」を基準として説明いたします。
上記の「私」は結婚して息子が1人。身内には両親とお姉さんがいます。
第三者証明を書けない人
図の「NG」と書いている方が書けない方(第三者証明が認められない方)です。
- 1親等→私のお父さん・お母さん・夫・子ども
- 2親等→私のおばあちゃん・おじいちゃん、お姉さん、お姉さんの夫、(表にはありませんが)孫
- 3親等→私のひいじいちゃん・ひいばあちゃん・おじさん・おばさん・お姉さんの子ども、(表にはありませんが)ひ孫
上記が三親等になりますので第三者証明は無効になります。
もちろん、私のことを私が書くのはNGですので自分自身も対象外になります。
第三者証明を書ける人
三親等以外になるので「いとこ」と覚えておくと分かりやすいです。
表の「OK」と書いてある方が第三者証明を書くことができます。
実際の申請資料によると…第三者証明の申立者
障害年金経営研究会の事例では
- 当時の主治医
- 当時のソーシャルワーカー
- 当時の担任の先生
- デイサービスなどの利用者
- リハビリの施設の方
- 友人
- 元同僚
- 上司
- 同級生
に書いてもらうことが多いです。
やっぱり当時の様子を知る友人・知人・同僚が多いですね。
障害年金経営研究会で第三者証明の資料を見てきましたが、
- 20歳前障害→当時の担任・子供のときからの友達・お母さんの友人
- 働いているときの発病→同僚・上司・障害者枠の場合の監督者など、職場の人
が多い印象です。(あくまでも個人的な見解です)
離婚した配偶者(夫・妻)は第三者証明を書けるの?
ちなみに、別れた配偶者は民法上は家族にはなりませんので、第三者証明を書くことができます。
離婚された方は元配偶者に書いてもらうのも1つの方法ではありますね。
障害年金経営研究会・横田先生よりアドバイス
第三者証明についてご教示ください、婚姻後、離縁した元配偶者は証明者になれますか?
第三者証明の証明者になれるのは、
申立時において請求者の民法上の三親等内の親族でない場合、
ですので元配偶者は証明者になれます。
「第三者申立書」の請求者との関係:当時の関係(婚姻配偶者)、現在の関係(知人)の記載で大丈夫です。
第三者証明は何人に書いてもらえばいいの?
第三者証明は1人につき1枚書いてもらいます。
第三者証明は誰が書くかによって必要な証言数が変わってきます。
- 医療従事者の場合→1名で十分
- 医療従事者ではない場合→2名以上
まずは、医療従事者の証明が取れないか確認をしてみましょう。
過去の障害年金経営研究会の事例では、医療従事者ではない2名以上の第三者証明が多いです。
医師による第三者証明は少ないですね。
第三者証明の書式は?
日本年金機構のサイトからダウンロードができます。
初診日に関する第三者からの申立書(第三者証明)(PDF 111KB)
日本年金機構のサイトにはPDFしかなく、エクセルやワードはありません。
また、書き方の注意書きもありますので、確認をおすすめします。
初診日に関する第三者からの申立書(第三者証明)を記入される方へ(PDF 798KB)
上記に記載されている注意書きを見てみましょう。
「初診日に関する第三者からの申立書」の目的
下線部にある記入する項目ですが
- 請求者や請求者の家族などから最近得た情報→×
- 申立者が見たり聞いたりした当時に知った内容→〇
です。
簡単に言うと、「最近聞いた内容はダメよ、その当時に聞いたこと・見たことを書いてね」ということです。
第三者証明の記入方法
こちらに関しては、下記に記載しているので割愛します。
20歳前に初診日がある第三者証明を記入される方に対するお願い
20歳前の場合は、20歳になるまでに病院に行っていることを証明する必要があるため、「20歳前に医療機関を受診していることがわかる内容」を記入する必要があります。
※下記に記載例がありますのでご覧ください。
第三者証明の書き方は?
第三者証明は「第三者」とあるように、家族以外の方に書いてもらう必要があります。
まずは用紙で使用されている専門用語の説明をしたいともいます。
請求者・申立者とは
- 請求者→障害年金を請求する人
- 申立者→請求者の知人などこの書類を書く人
上記を指します。
第三者証明の資料
このような資料に記入をしていきます。
上から、それぞれ項目を見ていきましょう。
知ったきっかけ
請求者が障害年金をもらう障害の状態であったことを証明する資料ですので、その当時の時期を記載します。
知ったきっかけは
- 直接見たのか
- 人から聞いた話なのか
1か2のどちらかを〇で囲みます。
聞いた場合は、いつ聞いた情報なのか日付を記入します。
請求者との関係
- 傷病名:病気の名前
- 初診日:請求人が初めて病院で診察を受けた日
- 医療機関名・診療科:初診日の病院の情報
- 所在地:病院の住所
を記入します。
- 申立者が見たり聞いたりした当時に知った内容のみを記入してください。
- 記入できない項目があっても構いません。
(日本年金機構より)
と、ありますので、知らない項目に関しては空欄で大丈夫です。
日付までわからない場合は下記のように「夏」や「〇月頃」でも大丈夫です。
申立者が知っている当時の状況等
「申立者が知っている当時の状況」を記入します。※書き方に関しては下記に記載しております。
申し立て日は記入した日付を書きます。
申立者
- 申立日:資料を記載した日
- 住所・連絡先・氏名:記入した人の情報
を記入します。
日本年金機構から確認の連絡がくる場合もあるので、普段使っている電話番号をご入力ください。
※携帯電話の番号でも大丈夫です
何を書いてもらえばいいの?
申立人が「知っていること」を記入します。
知っていることは「実際に見たこと」と「聞いたこと」のどちらかを記載します。
日本年金機構では下記のように掲載しています。
【記入事項】
①申立者が請求者の初診日頃の受診状況を知り得た状況
初診日頃の受診状況をどのように知ったのか具体的に記入してください②発病から初診日までの症状の経過
病気やケガが発生してから初めて医療機関を受診するまでの間の具体的な症状を記入してください③医療機関の受診契機
請求者は初めて医療機関を受診したきっかけ(原因や理由)について当時見たり聞いたりして知っている内容を記入してください④初診日頃における請求者の日常生活上の支障の程度
病気やケガの影響により、日常生活を送る上で支障があった具体的な状況を記入してください⑤医師からの療養の支持など受診時の状況
医師から請求者に対する日常生活、学校生活または勤務などにおける指示(注意)について当時見たり聞いたりして知っている内容を記入してください(日本年金機構より)
少しイメージが付きにくいと思いますので実際の申請資料から少しカスタマイズをしたものを掲載します。
ママ友に第三者証明を記入してもらったパターン
精神疾患の方ー母親の知人からの証明
(お母さんの名前)さんは、 (息子さんの名前) の母親です。平成〇年7月頃〇〇学校のPTAで
初めてお会し、今でも (お母さんの名前) とお付き合いがあります。
私の息子は (息子さんの名前) と同じクラスに在籍しており (息子さんの名前)君の当時の様子は (お母さんの名前)や私の息子から状況を聞いています。
(息子さんの名前)君は小さい時から几帳面な性格で中学2年生のころに担任からクラスメイト全員の前で怒られたため、その後、不登校になりました。
平成〇年11月頃(お母さんの名前)とPTA関連でやり取りをすることがありその時に (息子さんの名前)君の精神疾患の診断を受けたと聞いております。
高校卒業後は大学受験に失敗したと聞き、何も手を付けられないようになり就職もせずに引きこもって困っていると (お母さんの名前)から聞いています。
当時の主治医に第三者証明を記入してもらったパターン
平成28年8月、〇〇科を受診。当時、私は〇〇科の非常勤勤務であった。
申立者は紹介で外来に来た。しばらく診療を行い〇〇病と診断したが治療方針を変えるために
精密検査である〇〇を行い、〇〇が必要であると判断した。
〇〇病院では〇〇手術を行うことができないため常勤病院である〇〇に転院。
〇〇と診断し治療を開始した。
※わかりやすくカスタマイズしています
障害年金経営研究会の事例データで「第三者証明」と検索していただくと医師・知人から書いていただいた第三者証明の資料を見ることができます
会員様向け事例一覧
症状大項目 | 傷病名 | 事例タイトル | 年金の種類 | 請求種別 | 請求時点等級 | 年額(円) |
腎疾患 | 糖尿病腎症 | 20歳前の第三者証明 | 障害基礎年金 | 事後重症 | ||
腎疾患 | iga腎症 | 医師の第三者証明で初診日が認められた事例 | 障害厚生年金 | 審査請求 | 2級 | 1149540 |
眼 | 両眼網膜色素変性症 | 第三者証明を知人に限らず、眼鏡購入店に依頼したことで確固たる初診日証明を得られた事例 | 障害厚生年金 | 事後重症 | 1級 | 1700000 |
肢体 | 脳幹損傷、脳挫傷 | 第三者証明による初診日認定 | 障害基礎年金 | 事後重症 | 2級 | 780100 |
肢体 | 関節リウマチ、変形性膝関節症 | 関節リウマチ等で障厚2級を受給できたケース | 障害厚生年金 | 事後重症 | 2級 | 1078506 |
聴覚 | 両感音性難聴 | 両感音性難聴で障害厚生年金3級受給 | 障害厚生年金 | 事後重症 | 3級 | 737778 |
眼 | 網膜色素変性症 | 第三者証明 | 障害基礎年金 | 事後重症 | 2級 | 1302700 |
腎疾患 | 慢性腎不全 | 第三者証明を添付した事例 | 障害厚生年金 | 事後重症 | 2級 | 1582837 |
血液・造血器疾患 | 潰瘍性大腸炎 | 初診日証明のために病院のPCの画面コピーを利用した事例 | 障害厚生年金 | 事後重症 | ||
腎疾患 | 腎機能障害 | 第三者証明を添付した事例 | 障害基礎年金 | 事後重症 | 780000 | |
精神 | 双極性感情障害 | 初診日証明 | 障害基礎年金 | 事後重症 | 2級 | 780100 |
精神 | うつ病 | うつ病で初診日が困難だった事例 | 障害基礎年金 | 事後重症 | 779300 | |
腎疾患 | 末期腎不全 | 初診日がはっきりせず苦労した事例 | 障害基礎年金 | 事後重症 | 2級 | 779300 |
精神 | 統合失調症 | 統合失調症で基礎1級を受給した事例 | 障害基礎年金 | 事後重症 | 1級 | 974125 |
精神 | てんかん性うつ病 | 20歳前障害。第三者証明で初診日認定。現在は全くてんかん発作がなく、てんかん性うつ病で2級に認定された事例。 | 障害基礎年金 | 事後重症 | 2級 | 779300 |
腎疾患 | 慢性腎不全 | 第三者証明取得により認定 | 障害基礎年金 | 事後重症 | 2級 | 779300 |
眼 | 網膜色素変性症 | 初診日が20年前(当時40歳)で、カルテが破棄されていたが、当時の診察券と第三者証明2名分を取り、障厚2級が認められた網膜色素変性症における事例 | 障害厚生年金 | 事後重症 | 1680582 | |
精神 | 統合失調症 | 初診日が20歳前であった為、今から20年以前だった。初診の病院、2番目の病院ともにカルテが破棄されていたが、3番目の病院へ転医する際の紹介状に初診に関する記載があった事例 | 記載なし | 事後重症 | 2級 | 記載なし |
その他 | クローン病 | クローン病で障害厚生年金2級受給 | 障害厚生年金 | 事後重症 | 2級 | 1074284 |
精神 | 統合失調感情障害 | 初診の客観的証拠は血液検査結果しかなく、医師の記憶だけで受証を作成してもらった。 | 障害厚生年金 | 事後重症 | 棄却 | |
精神 | 難治性 てんかん | ①第三者証明でてんかん発作が初診日認定。②診断書作成依頼状どおり作成。③精神障害以外に知的障害。出生日から発病日までの病歴・就労状況等申立書を追加作成 | 障害基礎年金 | 事後重症 | 2級 | 780100 |
肢体 | 交通事故による脳幹損傷、脳挫傷 | 34年前の交通事故の初診日を確定するために第三者証明、事故の記事、家族や本人の記憶を整理し、諦めずに捜し証明できたこと | 障害基礎年金 | 事後重症 | 2級 | 780100 |
心疾患 | 虚血性心筋症 | 企業の保健室での診断が初診と認められなかったため、審査請求を行った事例 | 障害厚生年金 | 事後重症 | 1612200 |
さいごに
今回は第三者証明についてお伝えをいたしました。
第三者証明を頼みにくい…という場合は社労士に相談してみてください。
社労士から当時の友人や担任に依頼してくれる場合もります。
初診日が証明できないときに、第三者証明で申請する方法もありますので、一人で抱え込まずに障害年金専門社労士に相談をしてみてください。
以上です。ここまでありがとうございました!