こんにちは!船井総研の山本です。
「障害年金の精神疾患の診断書-日本年金機構が審査の時に見る項目とは?」というテーマで解説をしたいと思います。
私は現在、社労士の障害年金に特化した事務所のコンサルティングサポートをさせていただいており、また、障害年金経営研究会という障害年金に特化した社労士向けの勉強会の責任者も担当させていただいております。
今回は、会員様からもよく質問をいただく「障害年金の精神の診断書」と「日本年金機構が等級認定をする際に見ているポイント」について例会で情報交換をされた内容をお伝えいたします。
あくまでも、社労士事務所同士の情報交換の内容ですので、すべての人に当てはまるとは限りません。
障害年金の情報は少なく、特に精神疾患となると目に見える基準がないため、非常にあいまいな箇所もございます。
今回は障害年金の受給対象者の方も読まれると想定して、なるべく専門用語は使用せずに解説したいと思います。
※障害者年金で検索されている方も多いため「障害者年金」という記載もしております。
それでは参りましょう!
精神疾患でも障害年金(障害者年金)を受け取れるの?
結論、一定の障害状態を満たしていれば、障害年金の受給ができます。
主な精神疾患の病名はこちらです。
- うつ病
- 双極性障害(躁うつ病)
- 統合失調症
- 気分障害
- てんかん
- 発達障害
- 高次脳機能障害
などです。
障害年金は日常生活に支障がどれだけあるか
就労が困難か、その人の病状を判断して支給されます。
特に、精神疾患となると「仕事をしているか・していないか」が社会生活の判断基準になるため就労状況は非常に重要です。
障害年金(障害者年金)の診断書とは?
障害年金を申請するときは医師に診断書の作成を依頼します。
先ほど紹介した精神疾患をはじめ、知的障害や高次脳機能障害なども精神疾患用の診断書を使用して提出をします。
診断書はこちらです
※診断書は日本年金機構のサイトにございます
今回は裏表のキャプチャを載せておりますが、実際はA3用紙の裏表になります。
医師によっては手書きで書く先生もいたり、エクセルで作成される先生もいます。
※手書き、パソコンどちらでも問題はないです
神経症は障害年金(障害者年金)を受け取れないって本当?
ただし、同じ精神疾患の中でも、認定される病名と認定されない病名があります。
神経症は障害年金の受給対象外の病気です。
- 不安障害
- パニック障害
- アルコール依存症
- 解離性障害(ヒステリー性神経症)
- 強迫神経症(強迫性障害)
- 社会不安障害(恐怖症)等
診断書の①の箇所に病名が書かれています。ここの病名が何かによって変わってきます。
ただし、病名が神経症でも、「精神病の病態を示している場合は障害年金の受給が可能」であるため、
診断書の備考欄にそのような記載をしてもらえれば障害年金の受給の可能性はあります。
障害年金(障害者年金)の診断書で日本年金機構が確認すること
こちらは、厚生労働省が題している資料の一部の抜粋です。
精神疾患による病態に起因する日常生活の制限の度合いを確認します。
そのため診断書(精神の障害用)では、以下の内容を確認するための記載項目を設けております。
1.精神疾患の存在、その病状及び重症度
〔例えば、⑩ア・イ欄「現在の病状又は病態像」、カ欄「臨床検査」〕2.日常生活及び社会生活上の制限の度合い
〔例えば、⑩ウ2・3欄「日常生活能力の判定/程度」、エ欄「就労状況」〕
※ 確認にあたっては、疾患名や病歴・治療経過・病状等の内容と日常生活能力に関する評価について、齟齬や矛盾がなく、整合性があるか、という点にも着目して行います。
上記のことから、精神疾患によって日常生活においてどれだけ社会生活が制限されているのか(支障があるのか)で判断されます。
障害年金(障害者年金)の受給判断のときは診断書のここが見られている
障害年金の診断書では裏面の日常生活の7項目というところが非常に重要です。
何かというと、障害年金を申請している人の日常生活を記載する欄であり
- 日常生活に支障がある→障害年金を必要としている
- 日常生活に支障がない→障害年金がなくても大丈夫
という判断になります。
この日常生活の項目について詳しく見てみましょう!
精神疾患用 診断書の裏面 日常生活能力の判定項目とは
拡大するとこのようになっております。
医師はそれぞれの項目に対して4段階でチェックをしていきます。
結論、このできない項目が多ければ多いほど障害が重く、障害年金を必要としていると判断されます。
何個チェックがあれば●級になりますよーというのは、日本年金機構がちゃんとガイドラインを出しています。
障害年金(障碍者年金)用の精神疾患のガイドライン
こちらが日本年金機構が出している精神疾患のガイドラインです。
精神疾患は目に見えるものではなく、医師によっても診断書にバラツキが出たため、厚生労働省がガイドラインを策定しました。
※国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドラインはこちらをご覧ください
《表の見方》
1.「程度」は、診断書の記載項目である「日常生活能力の程度」の5段階評価を指す。
2.「判定平均」は、診断書の記載項目である「日常生活能力の判定」の4段階評価について、
程度の軽いほうから1~4の数値に置き換え、その平均を算出したものである。
3.表内の「3級」は、障害基礎年金を認定する場合には「2級非該当」と置き換えることとする。
身体的機能の障害に起因する能力の制限(たとえば下肢麻痺による歩行障害など)は、この診断書による評価の対象としません。
「できる」とは、日常生活および社会生活を行う上で、他者による特別の援助(助言や指導)を要さない程度のものを言います。
また、「行わない」とは、介護者に過度に依存して自分でできるのに行わない場合や、性格や好き嫌いなどで行わないことは含みません。
それではそれぞれの日常生活の項目を見ていきましょう!
適切な食事
1人暮らしを想定して1~4のどれに当てはまるかを確認していきます。
適切な食事というのは、ただ「ご飯を食べること」を指すのではなく、栄養のバランスを考え適当量の食事を適時にとることができた状態ではじめて「できる」と判断します。
「適切な食事」欄においてのできる・できないの定義は下記です。
1.できる
栄養のバランスを考え適当量の食事を適時にとることができる。(外食、自炊、家族・施設からの提供を問わない)
2.自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
だいたいは自主的に適当量の食事を栄養のバランスを考え適時にとることができるが、時に食事内容が貧しかったり不規則になったりするため、家族や施設からの提供、助言や指導を必要とする場合がある。
3.自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる
1人では、いつも同じものばかりを食べたり、食事内容が極端に貧しかったり、いつも過食になったり、不規則になったりするため、経常的な助言や指導を必要とする。
4.助言や指導をしてもできない若しくは行わない
常に食事へ目を配っておかないと不食、偏食、過食などにより健康を害するほどに適切でない食行動になるため、常時の援助が必要である。
身辺の清潔保持
こちらも1人暮らしを想定して1~4のどれに当てはまるかを確認していきます。
1.できる
洗面、整髪、ひげ剃り、入浴、着替え等の身体の清潔を保つことが自主的に問題なく行える。必要に応じて(週に1回くらいは)、自主的に掃除や片付けができる。また、TPO(時間、場所、状況)に合った服装ができる。
2.自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
身体の清潔を保つことが、ある程度自主的に行える。
回数は少ないが、だいたいは自室の清掃や片付けが自主的に行える。身体の清潔を保つためには、週1回程度の助言や指導を必要とする。
3.自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる
身体の清潔を保つためには、経常的な助言や指導を必要とする。
自室の清掃や片付けを自主的にはせず、いつも部屋が乱雑になるため、経常的な助言や指導を必要とする。
4.助言や指導をしてもできない若しくは行わない
常時支援をしても身体の清潔を保つことができなかったり、自室の清掃や片付けをしないか、できない。
金銭管理と買い物
行為嗜癖に属する浪費や強迫的消費行動については、評価はしません。
1人暮らしを想定して1~4のどれに当てはまるかを確認していきます。
1.できる
金銭を独力で適切に管理し、1ヵ月程度のやりくりが自分でできる。また、1人で自主的に計画的な買い物ができる。
2おおむねできるが時には助言や指導を必要とする
1週間程度のやりくりはだいたい自分でできるが、時に収入を超える出費をしてしまうため、時として助言や指導を必要とする。
3. 助言や指導があればできる
1人では金銭の管理が難しいため、3~4日に一度手渡して買い物に付き合うなど、経常的な援助を必要とする。
4.助言や指導をしてもできない若しくは行わない
持っているお金をすぐに使ってしまうなど、金銭の管理が自分ではできない、あるいは行おうとしない。
通院と服薬
こちらも1人暮らしを想定して1~4のどれに当てはまるかを確認していきます。
ただ薬を飲むだけが「できる」ということにはなりません。
1.できる
通院や服薬の必要性を理解し、自発的かつ規則的に通院・服薬ができる。
また、病状や副作用について、主治医に伝えることができる。
2.おおむねできるが時には助言や指導を必要とする
自発的な通院・服薬はできるものの、時に病院に行かなかったり、薬の飲み忘れがある(週に2回以上)ので、助言や指導を必要とする。
3.助言や指導があればできる
飲み忘れや、飲み方の間違い、拒薬、大量服薬をすることがしばしばあるため、経常的な援助を必要とする。
4.助言や指導をしてもできない若しくは行わない
常時の援助をしても通院・服薬をしないか、できない。
他人との意思伝達及び対人関係
こちらも1人暮らしを想定して1~4のどれに当てはまるかを確認していきます。
1対1や集団の場面で、他人の話を聞いたり、自分の意思を相手に伝えたりするコミュニケーション能力や他人と適切につきあう能力に着目します
1.できる
近所、仕事場等で、挨拶など最低限の人づきあいが自主的に問題なくできる。必要に応じて、誰に対しても自分から話せる。友人を自分からつくり、継続して付き合うことができる。
2.おおむねできるが時には助言や指導を必要とする
最低限の人づきあいはできるものの、コミュニケーションが挨拶や事務的なことにとどまりがちで、友人を自分からつくり、継続して付き合うには、時として助言や指導を必要とする。
あるいは、他者の行動に合わせられず、助言がなければ、周囲に配慮を欠いた行動をとることがある。
3.助言や指導があればできる
他者とのコミュニケーションがほとんどできず、近所や集団から孤立しがちである。
友人を自分からつくり、継続して付き合うことができず、あるいは周囲への配慮を欠いた行動がたびたびあるため、助言や指導を必要とする。
4.助言や指導をしてもできない若しくは行わない
助言や指導をしても他者とコミュニケーションができないか、あるいはしようとしない。
また、隣近所・集団との付き合い・他者との協調性がみられず、友人等とのつきあいがほとんどなく、孤立している。
身辺の安全保持及び危機対応
こちらも1人暮らしを想定して1~4のどれに当てはまるかを確認していきます。
1.できる
道具や乗り物などの危険性を理解・認識しており、事故等がないよう適切な使い方・利用ができる(例えば、刃物を自分や他人に危険がないように使用する、走っている車の前に飛び出さない、など)。
また、通常と異なる事態となった時(例えば火事や地震など)に他人に援助を求めたり指導に従って行動するなど、適正に対応することができる。
2.おおむねできるが時には助言や指導を必要とする
道具や乗り物などの危険性を理解・認識しているが、時々適切な使い方・利用ができないことがある(例えば、ガスコンロの火を消し忘れる、使用した刃物を片付けるなどの配慮や行動を忘れる)。
また、通常と異なる事態となった時に、他人に援助を求めたり指示に従って行動できない時がある。
3.助言や指導があればできる
道具や乗り物などの危険性を十分に理解・認識できておらず、それらの使用・利用において、危険に注意を払うことができなかったり、頻回に忘れてしまう。
また、通常と異なる事態となった時に、パニックになり、他人に援助を求めたり、指示に従って行動するなど、適正に対応することができないことが多い。
4.助言や指導をしてもできない若しくは行わない
道具や乗り物などの危険性を理解・認識しておらず、周囲の助言や指導があっても、適切な使い方・利用ができない、あるいはしようとしない。
また、通常と異なる事態となった時に、他人に援助を求めたり、指示に従って行動するなど、適正に対応することができない。
社会性
こちらも1人暮らしを想定して1~4のどれに当てはまるかを確認していきます。
1.できる
社会生活に必要な手続き(例えば行政機関の各種届出や銀行での金銭の出し入れ等)や公共施設・交通機関の利用にあたって、基本的なルール(常識化された約束事や手順)を理解し、周囲の状況に合わせて適切に行動できる。
2.おおむねできるが時には助言や指導を必要とする
社会生活に必要な手続きや公共施設・交通機関の利用について、習慣化されたものであれば、各々の目的や基本的なルール、周囲の状況に合わせた行動がおおむねできる。
だが、急にルールが変わったりすると、適正に対応することができないことがある。
3. 助言や指導があればできる
社会生活に必要な手続きや公共施設・交通機関の利用にあたって、各々の目的や基本的なルールの理解が不十分であり、経常的な助言や指導がなければ、ルールを守り、周囲の状況に合わせた行動ができない。
4.助言や指導をしてもできない若しくは行わない
社会生活に必要な手続きや公共施設・交通機関の利用にあたって、その目的や基本的なルールを理解できない、あるいはしようとしない。そのため、助言・指導などの支援をしても、適切な行動ができない、あるいはしようとしない。
上記が日常生活において、できるできないの定義でした。
まずは自分がどれに当てはまるか確認をしてみてください。
診断書で気を付けていただきたいこと
改めてになりますが、障害年金の申請は障害年金用の診断書に書いてもらう必要があります。
※障害者手帳の際に書いてもらった診断書の使いまわしはできません。
こちらが実際に医師に書いてもらった診断書です。
(ご支援させていただいている社労士事務所様からお借りしました。ありがとうございます!)
よくよく見てみると、医師の印鑑がいっぱい押してあります。
この印鑑が何かというと、医師の訂正印なのです。
診断書の訂正をするときに、医師の印鑑を押して、修正をしているんですね。
見ての通り、以外と訂正箇所が多かったりします。
今回は、社労士の先生が書き漏れの確認をしたり、症状の確認などをしててくれたためこの診断書の方は障害年金の受給が決定しました。
一般の方だとなかなかわからないですよね…
そんなときはぜひ、社労士に相談をしてみてください。
さいごに
いかがでしたか?
精神疾患用の障害年金の診断書にはしっかりと定義があり、医師はガイドラインに基づいて適切な診断書を書いてくれます。
中には、障害年金用の診断書を書いたことがないという医師もいるので、その場合は社労士のチェックがあると安心です。
時間があるときに、一般の方向けの障害年金の診断書のチェック方法をお伝えしたいと思います。
以上です。ここまでありがとうございました!